博多帯は、一年中使うことができる非常に便利な帯です。
博多帯の世界を知っていただけるよう、様々な側面からお話をしていきます。
目次
博多帯の基礎知識
1.博多織りの歴史を知る。
博多織りの起源は鎌倉時代、中国の宋に渡った博多商人が織物の技法を習い、帰国後独自の技法を加えて作ったものとされています。それがルーツです。博多は九州福岡ですが、最近はその近辺でも織られています。
江戸時代になると黒田長政が幕府への献上品として博多織を持っていきます。献上品とはその地域で一番良いものを税金として納めていたので、福岡で一番良いものである博多帯が選ばれます。
その時の柄が「献上柄」として博多織の代表的な柄となりました。江戸幕府へ献上することで博多織の全国デビューへのきっかけとなったのです。ですから江戸時代の武士の着物の帯は博多帯でした。(当時は高級品でした。)
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今でも男性の帯として博多帯が代表的ですね。このように博多織の歴史は非常に古いことがわかります。
2.献上柄から現代的な柄まで豊富にあります。
さきほども触れましたが、幕府に献上する柄である「献上柄」は博多帯の代表柄です。別名「独鈷華皿文様(どっこはなざら文様)」という仏具の柄で、博多帯として一番普及していました。(普段は「どっこ柄」と言われています。)
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現在でも博多帯=どっこ柄がと認識している方が多いと思いますが、最近はまったく違う柄も出ています。花柄だったり、七宝文様だったり本当に様々です。ですから便利な博多帯ですので、ぜひこの機会に豊富な柄を目にしていただき、新たな博多帯の世界を楽しんでいただければと思います。
3.博多帯は日常着・おしゃれ着用の帯です。
日本の三代織物とは、西陣織・博多織・桐生織があります。着物が着られなくなった現代は桐生織りは廃れてきていますが、「フォーマルの西陣、カジュアルの博多」と帯の代表として言われています。
西陣織はフォーマルの代表で、能の衣装などにも使われています。礼装に合わせる帯はだいたい西陣織りですね。一方博多帯は日常着カジュアルの代表ですので、フォーマルな場面、礼装には絶対合わせてはいけません。
どんなに高価な良い博多帯でもカジュアル使い、おしゃれ着物までだということを覚えておきましょう。
4.織り方の特徴は?
単衣仕立てが基本の織り方で、両面ともつるんとした肌触りです。
博多織とはたくさんのを縦糸に非常にしっかりした太い横糸を力強く打ち込んで作られるのが特徴の織物です。木綿糸が使われることもありますが、ほとんどが絹糸で織られています。帯自体がしっかりしているので、お太鼓などに締め上げると型崩れしにくく私もとても便利で好きです。糸がみっちりと織り込まれているので、何かの拍子に糸がひっかかって飛びててしまうようなことはほとんどありません。
鳴く帯
私が初めて博多帯を締めたとき、体を動かすたびにキュッキュっと鳴るんで、帯屋さんに聞いたことがあります。そうすると、「帯が鳴く、と言って、それが博多の帯の特徴なんですよ」と教えてくれました。これが博多帯なんです。糸がみっちり詰まっているから擦れあった時に鳴くんですね。他の帯ではこうはなりません。面白い現象ですね。
しかし、お茶会には絶対だめです。きぬ擦れの音さえだめなので、このような場には締めないようにしましょう。
5.博多帯の種類を知る。
名古屋の博多帯 単衣仕立て
八寸名古屋の博多帯は単衣で作られています。名古屋帯といったら普通は袋状になっています。これが博多帯の中でも一番特徴的な帯だと言えます。 お太鼓をシャキッと締められてとてもお洒落に装えるので着物を楽しんで着たいという方にはぴったりですよ。
一重仕立てなのに、表と裏で全くちがう柄で織られているものもあります。お太鼓部分の柄も表と裏で違うので重宝なんです。このような帯は一つあると便利ですよ。
袋仕立ての半幅
袋仕立てでは、半幅のものがでています。小袋帯といいます。これも両面使えるものがありますので、趣を変えた使い方ができて便利です。貝の口、一文字などの結びでシャキッと粋な結びがよく合います。
単衣の半幅
夏用の単衣の半幅から、春秋〜冬にかけて使える半幅などがあります。これも単衣なのに表はどっこ柄裏は直線柄といったような違う柄を楽しめるものが出ています。
紗献上
献上の柄のなかに紗を織り込んだ真夏用の博多帯です。より涼しく着れる工夫がしてある単衣ですから、博多は涼しいかといったらそうでもありません。これはしっかり糸を織り込んである、目が詰まっているという特徴からもなんとなくイメージできるかなと思います。ですので、より一層涼しく着たいという方は紗献上の博多を選ばれるのも良いでしょう。
6.博多帯の素材と色柄を知る。
素材
絹糸100パーセントが中心ですが、木綿や最近はポリエステル糸が数割入ったものもあります。またこれは、どんなお着物、帯にも言えることですが、糸の質によって値段に差がでてきます。たとえば伊達締めですが、1万円近くから5千円、3千円などあります。絹糸100パーセントでも三千円ほどというのもあります。同じ絹糸でも様々あるということも抑えておきましょう。
色柄
色は多彩でモダンな柄が最近は多く出回っています。他の帯以上にたくさんの色味・柄が出ています。斬新ではっきりした色から優しい色まで、本当に豊富です。定番のどっこ柄を探すのが難しいくらい、柄にもたくさんの種類がでています。
白地に赤のどっこ柄の博多帯を締めて歩いていた所、声をかけられたことがありました。「博多の帯って普段着物にしていいんですか?」と言われんたんです。どっこの帯を日常着物に合わせてお太鼓に締めていることに驚いたようでした。その方はどっこの博多帯は特別な時に使うものと思っていたようです。舞子さん芸妓さんなどが使うような帯だと思っていたらしく、持っていても使い方がわからなかったそうです。
どっこ柄の印象は浸透していても、人によっては案外使い難いものなんだと思った瞬間でした。もし博多帯をお持ちでしたら、夏は浴衣に、春秋は紬・小紋などに合わせて楽しんでくださいね。
博多帯の楽しみ方
1.博多帯はオールシーズン使えます。
博多帯は一年中締められる帯と言われています。単衣仕立てが多いですので、6月9月の単衣の季節や、夏などには特に合わせやすいんです。冬の場合は色が濃いものや、絹糸が分厚めだったり、小袋帯など、季節感にあったものを使うと良いですよ。
いろいろ種類があって一概には言えませんが、「オールシーズン使える博多帯は、半幅の小袋帯」と抑えておきましょう。
2.博多帯と着物の合わせ方
博多帯に合わせる着物は小紋などのお洒落着のランクまでで、セミフォーマル、フォーマル着物には合わせません。あくまで小紋くらいのランクの着物に合わせる帯です。
一番代表的なあわせ方は、夏の浴衣でしょうか。高級浴衣とされる、綿紅梅や近江縮、有松の絞りの浴衣などにぴったり合います。そのほか、袷や単衣の色無地で紋無しのものなどにも合わせられます。
・洒落着物として真骨頂のあわせ方
「大島紬/塩沢紬/結城紬」などは非常に良い値段がするお着物ですが、フォーマルには向きません。格はおしゃれ着お出かけ着程度です。このような紬に博多帯はぴったり合います。洒落着物の真骨頂といった趣です。 そのほかの紬ですと、 夏紬だと、近江縮や小千谷縮、夏大島、夏塩沢、夏結城、紗縮緬、透し織の米沢紬(米沢紬は基本は秋冬の織りですが、透し織で夏に向いたのもあるんです。)があります。
また「牛首紬」という夏用のほそーい糸を使った非常に高価な夏紬がありますが、それにも合わせられます。さらに、麻の上布や芭蕉布など、ほとんどの紬は全て博多帯を合わせられると思っていただいて良いでしょう。
それでは今日はこのへんで。良い一日を。
本日紹介した内容は以下の「おしゃべり着物教室」をまとめたものです。お時間があるときに聞いてみてくださいね。