「今、家にあるものは留袖と訪問着のどちらだろう?」「結婚式に出席するのに留袖か訪問着か、どちらを着れば良いのか迷っている・・・」など,留袖と訪問着は特に迷いやすい種類のものになります。このような疑問を解消できるよう、これら2種類のお着物の違いをまとめていきたいと思います。
色留袖
目次
1.留袖について(黒留袖と色留袖)
留袖には、「黒留袖」「色留袖」と二つの種類があります。
1-(1)黒留袖
黒留袖
五つ紋の入った黒留袖は最高位の格のお着物として用いられています。
既婚女性の【第一礼装】として、結婚式のような改まったシーンで装われます。このお着物は、新郎新婦の母親、新郎新婦の姉妹(既婚)や親族、仲人の立場の方の装いとして最適です。
※紋に関して・・・黒留袖に本来は「染め抜き日向紋の”実家”や”婚家”の家紋」を入れます。
レンタルのお着物に入れられている紋は、どのような場にも向く通紋の「五三桐(ごさんのきり)」の紋が使われることが一般的です。
1-(2)色留袖
色留袖
五つ紋入りの色留袖は黒留袖と同格である【第一礼装】として、また三つ紋や一つ紋入りのものは準礼装として装います。
黒留袖が既婚女性のみ着用できるのに対して、色留袖は未婚・既婚問わずに着られる礼装用のお着物になります。
着用範囲が広くなるために、紋の数は「五つ紋」よりも「三つ紋や一つ紋」をいれることが多いようです。たとえば、現在では結婚式や披露宴に出席する際の親族の装いとして昔ほど紋の数にこだわらずに三つ紋の色留袖を着ることが一般的になっています。
1-(3)訪問着について
訪問着
訪問着は留袖の次に”格”のあるお着物になります。大正時代末期〜明治時代初期に「気軽に着られるよそ行き着物が欲しい!」という要望に応え作られたものが訪問着です。(大正時代までは”留袖のような格の高い着物”か”日常着としてのお着物”の種類しかなく、これらの中間の格のお着物として考案されました。)訪問着という名前は昼間の訪問用の装いである「ビジティングドレス」が由来です。
また訪問着は縫い目をまたいで模様がつながる「絵羽模様」になるのが特徴のお着物になります。
一つ紋の訪問着は【より礼装向きの準礼装】として
紋無しのものは【準礼装~略礼装】として
捉えられ、格に微妙な違いがあります。
本来入学式や卒業式・結婚式のような慶事では、”紋付のお着物”を着ることが基本とされていますが、近年では紋の省略された訪問着も多くあります。紋無しの訪問着でも略礼装として装えることから、一般的になったようです。
お着物を着る機会が多い方には「※共色の縫い紋(一つ紋)付きの訪問着」が重宝されています。これは、慶事のような改まった場やお茶会のような場、または観劇・・・等のような「ある程度改まった装いが必要なシーン」において着ていきやすい格になることなどから言えます。また、紋が共色で縫いつけてあるので「目立ちにくい紋ではるが、紋入りということでフォーマルな装いになる」という解釈からも、一つ紋の訪問着が着られるようです。
※共色の縫い紋・・・お着物と同じ色の糸(共色)で刺繍された紋のこと。
2.留袖と訪問着の違い【すぐ見分けられるポイント】
2-(1)柄や模様の入り方をチェックする
留袖は上半身(胸元や袖)には柄が無く、裾周りにのみ入っています。
一方訪問着には裾まわりと胸元から袖にかけて柄が入っているものが基本ですので、この模様の入り方によって見分けられると思います。
2-(2)紋の入り方
ほとんどの留袖には紋が入っています。黒留袖の場合は五つ紋が入っていることがほとんどでしょう。そしてその紋は「染め抜きの紋」であることがほとんどです。
訪問着の場合も一つ紋から五つ紋まで入れることがありますが、一つ紋か無紋であることが多いようです。また、縫い紋が入っていた場合には留袖である可能性が低く、訪問着に入れる紋としてよく使われています。。
2-(3)特徴的な留袖の仕立て
「比翼仕立て」かどうかで見分けます。
留袖には「比翼仕立て」という独特な仕立て方があり、このポイントを確認すると見分けることができます。
必ずしも全ての留袖が比翼仕立てにされているわけではありませんが、「5つ紋の留袖」のほとんどの場合において確認できると思います。
※比翼仕立て・・・留袖の”衿、袖口、振り、裾周り”に白羽二重が縫い付けられていて、お着物の下に重ね着しているかのように見せるものをいいます。
※白羽二重・・・「光絹(こうきぬ)」とも呼ばれる絹糸で織られた伝統的な生地のことを言います。
3.留袖向きのシーン・訪問着向きのシーン
シーン1.親族の結婚式に出席する
「黒留袖」・・・新郎新婦の母親の正式な装いです。また仲人、既婚の親族(新郎新婦とより近しい関係にある親族)が主に着用します。
黒留袖
「色留袖」・・・既婚、未婚問わず、親族や親類、または新郎新婦の上司などが着用する機会が多い装いです。
色留袖
現在では新郎新婦の母親と仲人が黒留袖の装いをするのことが一般的です。母親や仲人の結婚式での役割は、招待客をもてなす主催者側であり、そのような立場であることをわきまえていることがとても大切になります。
そのために最も格があり正式な装いである「5つ紋の黒留袖」を装いゲストを迎えます。
また、新郎新婦の姉妹や親族も同様に格式高い装いで出席するよう心がけることが大切になります。主役との関係性が近しい人または3親等内の立場にある人は、格のある装いがふさわしいでしょう。
両家の母親が黒留袖で揃えた場合は、既婚の姉妹や近しい親族は「黒留袖・色留袖(※訪問着)」を装い、その他の親族や招待客よりも下の格にならないよう「5つ紋(〜3つ紋)」のものを選ぶことが正式です。(※正式には紋入りのものがふさわしいですが、その場の雰囲気や親族と話し合うなどしてお着物を選ぶことが一番です。訪問着でも紋入りであれば十分にフォーマル着としての格があります。厳しく装いを制限されるような場でない限り、そのような訪問着でも問題ないでしょう。)
注意点:もし親族の立場で黒留袖を着用しようとする場合には、必ず両家の母親の装いを確認しましょう。両家の母親が黒留袖を着用しない場合、親族が黒留袖を着ることはNGになります。これは、母親の装いより格が上にならないようにする為です。
また細かい決め事は家柄や地域によって違いがありますので、不明な時は親族に聞くことが一番だと思います。
シーン2.主賓として結婚式に出席する
色留袖
主賓の装いは、「格式高いものである」ことが必須です。
”黒留袖や5つ紋付きの色留袖”は、現在では親族側(主催者側)の装いとされているので、「紋付の色留袖や紋付の色無地、または訪問着」がこのような場に適します。
もし主催者側の装いが黒留袖ではなかったり洋装であった場合には、「訪問着」が良いでしょう。紋の数は一つが丁度良い格になると思います。
心得:主賓として出席する際は、「主催者の格とゲストの格の間の装い(=招待客の中では格のある装い)」であることを心がけましょう。格の判断が難しい立場なので、事前に親族の装いを確認しておくと確実でしょう。
シーン3.友人の結婚式に出席する
訪問着
友人として結婚式に出席する場合は、「訪問着、付け下げ、紋付の色無地」の装いが最適です。未婚の方には、「振袖」がオススメです。
訪問着のように胸元から袖など全体的に柄・模様の多く入ったお着物を装う際は「古典的な柄のもの」「吉祥文様が入ったもの」を選ぶと間違いありません。
モダンな柄の訪問着も式に映える個性的な装いとしておすすめです。レベルの高いコーディネートが求められるので、お着物に着慣れた方には特にオススメになります。
シーン4.子供の入学式や卒業式に出席する
訪問着
お洒落で格のある準礼装位の装いが最適であり、「訪問着」が一般的によく選ばれます。また「紋付の色無地や付け下げ」もオススメの装いです。
主役であるお子様を引き立てるコーディネートを心がけてください。
まとめ
①模様をチェックする・・・留袖には柄(模様)が裾まわりにのみ入っている。訪問着は裾まわりと、胸元から袖にかけても模様が入っている。
②紋をチェックする・・・留袖にはほとんどの場合紋が入っている。訪問着には紋付きのものと無紋のもの両方がある。
③比翼仕立てかどうがチェックする・・・比翼仕立てである場合は、色留袖である。
上記3つが見分けるポイントになります。じっくりとそれぞれの違いを見つけていってください。