基本の手入れ

基本の手入れ

畳む

昔はアイロンのない時代でもきちっとシワひとつなく着物を綺麗に着ていました。それは、正しいたたみ方をきっちりしていたから。さらに、畳んだお着物を布団の一番下に敷いて寝ていたそうです。

畳んだ時点で少しでもずれた畳み方をしていたらシワができてしまいます。折り鶴を折るときに端々を揃えてきっちりすると綺麗におれますが、お着物も折り紙のように丁寧に折りたたむことが大切です。

端々が合うように仕立てられているのが着物の良いところです。裾から袂まで隅々、全てをきちっと合わせると綺麗にたためます。

保管方法

きっちり畳んだお着物をたとう紙に入れ、桐のたんすにしまいます。これが非常に良い保管方法になります。絹の着物にとって湿気が一番怖いことなんです。ですから桐は通気性がよく湿気ることがないのでお着物にとってすばらしい保管場所なんですよ。

できれば桐の箪笥がよいのですが、ない場合は衣装ケースでも構いません。その場合は直接お着物をしまうのではなく、”すのこ”を一番下に敷きましょう。通気性がよくなりますので、よろしいと思います。さらに市販の湿気取りを入れてもよいでしょう。

プラスチックの衣装ケースなどに入れる場合は、ウコンのふろしきなどに入れるのもおすすめです。とにかく陽の光が入らないようにすることです。大判のふろしきでもよいので、お着物の焼けから守り、さらに通気よくする工夫をしてください。

お着物は十年二十年、、、五十年と何代にも渡って着ていきます。母が作ってくれた可愛い絞りの着物があったりました。自分としては非常に気をつけて保管していたつもりでしたが、何十年と経つうちに日焼けしていました。風呂敷で覆っていた部分に隙間があったのでしょう。その隙間分の一筋が見事に焼けていたんです。

ウール着物は絹など他のお着物とは別に保存

絹はウールとは一緒にしません。ウールは虫がつきやすい素材です。虫食い予防のためにも、ウールはウール着物だけで保管してください。

たとう紙

たとう紙にもピンから桐までありますが、本当に気をつけたいお着物にはたとうしの種類にも気を遣ってください。つるつるしたたとう紙ではあまり水分をとりませんので意味がありません。やはりしっかりした和紙のたとう紙をご利用される方が良いと思います。

特に黒留など礼装用の正絹のお着物は特にお値段もしますので、きちっと保存するために和紙の使ったたとう紙を使いましょう。

・たとう紙の取り替えどき
古いたとう紙は、色が変わってきています。水分をたくさん吸い取っている証拠です。色が変わってきていたら、替えてあげましょう。

黄色いウコンのふろしき

これは着物を守るためにあるので、例えば箪笥の一番したにしいて、たとう紙に入れた着物を入れて、風呂敷で包むのが理想的です。

カビが生えていたら

カビが生えていたら、すぐにお着物を広げ陰干ぼししながら手ではたいてください。初期のものでしたら取れる場合があります。もし、はたいても取れないようでしたら、専門のクリーニングに出すのが一番です。

お着物にもピンからキリまでありますが”普段着物”でもお仕立てまですると10万くらいはするものです。それを気楽に自分で手入れをして失敗するととても残念なことだと思います。私も数限りなくこのような安易な処置で失敗してきました。それを金額にするととても恐ろしいと感じてしまいます。

ですので、
カビが出ていたら「はたく」。とれなかったら「専門業者に出す」。と覚えておいてください。 

カビ予防のために

どうしてもカビが生えてしまう場合もありますが、やはり予防も大切です。
「虫干しをして、年に1回は着る」「食べ物やその他のシミは放置しておかない」が鉄則でしょう。

どんなに良い桐のタンスに入れていても、カビが生えてくることがあります。以前、ある方から頼まれてお着物を確認しに新築のお宅にお邪魔しました。

その方は細心の注意を払いお着物を収納されていました。日焼けしないよう日当たりのよくない部屋に桐の箪笥を置き、しっかりそこで保管されていました。

しかし見てみると、黒の喪服に小さい白のカビが生えていました。もちろんたとう紙にもしっかり入れてありました。

どうやら新築のお宅、またはマンションのような機密性の高い建物は特に湿気がこもりやすいようです。また日当たりのよくない場所は湿気が残りやすい為カビが生えてくるんです。

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お着物につくカビは一見するとわかりずらいものです。柄ものや色味のうすいものは本当にわかりづらいです。しかし真っ黒のお着物ですとカビが見えやすかったため、そのときはカビだとわかったんですね。この場合、同じ箪笥に入っている着物もすべてカビが生えていると思ってください。

虫干しの時期というのがあるので、そのような爽やかな時期に着物を全部干して湿気をとることが大切です。

私が一番いいと思うのは、「年に一回はそれぞれお着物」を着ることだと思います。一度来てお出かけすることで、お着物に風が入りますし、帰ってきたら手入れできます。たまには持っているお着物の点検を兼ねて着てみる機会をとってみてくださいね。

一度着た着物の手入れ

ハンガーにかけて陰干しする=湿気を取る

帰ってきたらまず着物の湿気をとることを心がけます。
和装ハンガーなどにかけて一晩から数日間は空気に触れさせ陰干しします。またハンガーにかけているうちに小さなシワも重力で取れる効果もあります。

帯に関してですが、帯は着物のように洗うことはほとんどできません。夏場はとくに汗をかきます。帯板にカビが生えることがあります。びっくりしました。また、帯のところに携帯を挟んでいたんですが、湿気で水濡れ寸前までいくことがありました。帯というのは思った以上に湿気ていますので、必ず陰干しして風にあてておいてください。

長襦袢や小物類ももちろん着物と同じように湿気をとるよう干しましょう。

半衿について・・・衿の汚れをチェックして、そんなに汚れてなければそのままにしておきます。もうすでに数回着ていて汚れが目立ってきたら半衿をとって洗いましょう。

汚れを確認する

ハンガーにかける際ですが、着物の汚れをよく見てください。本人が気づかないところに案外シミがついているものです。飲み物やら食べ物やら、見返すとわかりますのでしっかり確認しましょう。

衿、袖口、裾、裾の八掛は特に汚れやすい部分です。ホコリはしっかりはたいて取りましょう。

もし汚れを見つけたら水で濡らした布で押さえていきますと取れる場合もあります。薄地のものはあまり濡らしすぎると、水の輪ができそれが後々シミとして残ることもありますので、気をつけてください。

畳む

湿気取りが終わり、保管のためにお着物を畳みますが、ここもまた大切な工程です。たたみながら最後の

たたむ際にはシミや汚れを再度しっかりチェックしながらたたみましょう。きちっと畳むことだけが目的ではなくて、汚れやほつれなどの確認作業でもあります。次も美しく着れるよう手入れししっかりたたむことが大切かと思います。

正絹 ウール、木綿、紬着物の手入れ

正絹のお手入れ

汚れの手入れ・・・シミや汗取りに関しては全ての素材にいえることですが、なるべく早く気が付いたらすぐ対策をすることです。

礼装の正絹お着物の出番は十年に一回あるか無いかですので、帰ってきたらしっかり汚れをチェックすることです。迅速な手当が大切です。

正絹は、普段着物でも礼装でもなんであろうと、家での手入れは難しいと考えます。特に”袷”であったら難しいと思います。

繰り返し自宅での選択を試してみてマスターした方であれば、普段着物くらいでしたら良いとは思いますが、やはり基本は自分で洗わないほうが良いと思います。専門の業者に頼みましょう。

長く保存する場合、特に金箔などが貼ってる場合は長い年月畳んで置いておくとくっついたり剥がれたりしておきますので、和紙のような薄い紙を一枚白に当てるように入れておきましょう。

ウールのお手入れ

ウールのお着物は基本単衣ですので、ご自身で洗ってみることも可能です。その場合はウール用の洗濯洗剤を使えば大丈夫だと思います。

ウールは虫が食います。絶対に正絹などと一緒にしないでくださいね。さらに防虫剤をいれておきましょう。

昔、事情があって私の着物を全部ロフトにあげておいたことがあります。何年か目を通すことがありませんでした。箪笥にしまいきれないものはプラスチックの衣装ケースに入れていました。
ちゃんと手入れ、処理ができていなかったものは、虫食いがありました。その衣装ケースに入ったお着物のほとんどは被害にあっていたと思います。

木綿着物の手入れ

綿ですので、お家で洗っていただくことも可能です。しかし安心はできません。少し縮むことがあります。また色落ちにも注意してください。

浴衣などで藍染のものなどは、どんどん色が出てきますので注意です。ちょっと湿らすくらいだとどれくらい色が落ちるのかわかりません。色落ちが気になるようでしたら、専門のクリーニングにだしたほうが無難でしょう。浴衣であっても色落ちしてしまうと着れくなります。

干すときに縮まないように、しっかり生地を伸ばしながら引っ張りながら干しましょう。

紬の手入れ

紬に関しても、縮みます。自分で選択するよりクリーニングが良いかと思います。
交織といいまして、最近は絹と木綿、絹とウールなど様々な素材の糸を織り交ぜた紬が出てきています。紬でもウールが混ぜ込まれている場合がありますので、防虫剤を入れてると安心です。

汗対策

一年の中で暑い時期が増えてきているようです。お着物はやはり暑く汗もかきやすいですね。

私が若い頃の失敗談でこんなことがありました。
非常に暑い日で本当は単衣を着ていきたいと思うような日でした。しかしお茶会でしたので季節に準じた”袷”を着ていきました。

私は何とか涼しく着られるようにと思い、肌着を着ずに直接長襦袢をきました。今でもととても愚かな選択だったと感じますが、これは本当に大失敗でした。

汗がすーっと出てきまして、直接長襦袢にいきます。肌着をきていませんので、その長襦袢も単衣の薄いものでしたので、すぐ表地の袷の着物にまで汗が滲みでました。

肌着の役割もわからず、このように着てしまったため、結果的にクリーニングにとんでもなくお金がかかりました。

今では、汗対策として私は晒を巻いています。脇の下からお腹までまきます。汗っかきの方は、晒をまいたり、汗取り兼補正としてタオルを巻くことをおすすめします。

シワ予防、シワ対策

まず第一にやはりきちっと畳むことです。これがシワ対策として一番です。また和装ハンガーにかけておくと細かいシワはとれてきます。

しかし腰紐で締めたところが何日ハンガーにかけてもとれないことがあります。これは汗をかいた部分にシワになり固まってしまっている可能性があります。これは普通のシワではないので、専門の業者に頼み、汗取りと一緒にシワ伸ばしをしてもらいましょう。

特に訪問着やと留袖など特別な礼装用のお着物は専門の方に頼むのが無難です。

クリーニング

最近は洋服のクリーニング屋さんでも着物を受け付けてくれる場合もありますが、普段着物の場合はそれでも良いと思いますが、大切なお着物の場合はやはり専門店がおすすめです。

友人の失敗談ですが、のし柄部分が絞りでできているお着物をクリーニングにだした時の話です。クリーニングから帰ってきたら絞りがぜんぶぺたんと無くなってしまったそうです。出すときも相当もめたようですが、クリーニング前の証拠の写真もなかったのでどうしようもなかったそうです。

このようなこともありますので、万が一のこともありますので「絞りのお着物です」と一言添えることもお着物を守る観点からも大切なことだと思います。

今は技術も発達し良いクリーニングやさんもあります。信頼できるクリーニングやさん、着物専門のクリーニング屋さんに出してください。

木綿や浴衣はお家で洗う方法がありますが、それ以外の素材は慣れてきた人でしたらよいかと思いますが、基本は出しましょう。

また単衣ですと洗いやすのですが袷は特に洗いが難しいです。
表地の生地と裏に使っています八掛等の生地が違うと洗ったときにチヂミ具合が変わってくる場合があるんです。もし表地の縮みが大きかった場合は、裏地、八掛などが出てきてしまいます。

単衣の浴衣、ウールなどはそのような心配がありませんので、よいですよ。

クリーニングといいましても、だいたいドライクリーニンぐなんです。油性の汚れはおちても、匂いが落ちないことがあります。匂いは水洗いでなくては落ちないことがあります。それをわかった上でだすことが大切かと思います。

また私の知り合いで、着物を着るたび毎回クリーニングに出す方がいらっしゃいました。
ようふく感覚で毎日洗う感覚で出していたんだと思います。

しかし着物は肌着、長襦袢、一番下には晒をまいたりします。また補正する方は、タオルなんかも巻きますね。長襦袢や肌着の役割として着物が汚れないようにという予防の役割があります。

たとえば長襦袢の袖口、、着物の長さぴったりに誂えますね。これは着物の方につかないよう設計しているからなんです。

そう考えると普通のお洋服と違います。
お着物は洋服と例えると、コートやスーツ、そんな感覚です。そうしますと着てすぐには洗いませんね。お着物はクリーニングに出すたび、少しづつ痛むことを覚えておきましょう。

またクリーニングから帰ってくると、たとう紙に入って、またビニール袋に入っていることもありますので、ビニールはしっかりとってくださいね。

ベンジンについて

衿もとが汚れやすいのですが、そのときよくベンジンを使うと書かれています。
その場合は、たっぷりベンジンを含ませて叩くことが大切です。こすってはだめです。こすると糸が毛羽立ってきて糸が痛みます。
ベンジンをたっぷりつけて叩いてした布に汚れを移動させるという技術はなかなか難しいと思いますので、初心の場合はおすすめできないと感じています。

また何回もベンジンを使っていますと、色が抜けてくることがあります。着慣れたかたでそのうような経験をした方もいらっしゃいました。

安全策としてはやはり衿洗いとしてクリーニングにだしたほうが無難だと思います。

普段着物の場合は、共衿、掛け衿をはずして、よく洗ってつけると良いと思います。また縫い付けなければなりませんが。

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