ウールの着物について
ウールのお着物とは、、
若い方にはあまり耳慣れないお着物だと思います。
昔は紺地や黄色や赤の地色に絣模様、格子柄、花柄などが織り込まれた”日常着”の着物でした。
着物の格としては一番下になりますが、普段着物の代表として非常に着やすいものでした。
家事などに着て汚れてもお手入れが簡単というお着物です。
夏以外の3シーズン着れますし、単仕立てですので汚れても家の洗濯機で洗えるという便利さがあります。
これからお着物を着てみようかなと考えている方には気軽にお着物入門しやすいですし、またお着物生活の長い方でウールを着ていらっしゃる方にもお伝えできる内容になると思います。
ウールの着物 季節
ではウールの着物をいつ着るのかということですが、基本的には3シーズン、春秋冬の季節に着るものです。
羊毛ですので、夏はやはり暑いです。サマーウールなども出ていますが、基本的には春秋冬と思っていただいたほうがよろしいかと思います。
3月から4月に春は来ていただく時のアンサンブルのウール着物についてですが、
ウールの羽織以外羽織全般のことですが、
「桜の咲く頃には羽織を脱ぐ」
と言われていますので、3月4月頃のウールのお着物には大判のショールなどで寒さ対策をなさると良いと思います。夜桜など夜の外出の際などにはアンサンブルを着ることは大丈夫ですが、
羽織は基本的に4月上旬くらいまでと思っていてください。
ウールのお着物は単衣仕立てですので、お花見などの外出で汚れたら、その部分をさっと拭いておいて、お家に帰ったらすぐ洗濯していただければよろしいと思います。
また秋の始まりになりましたらまたウールの出番です。10月11月12月の真冬の寒い時期にはピッタリです。特に着やすいのは、年末のお正月の用意でお買い物に行ったり、除夜の鐘のときのお参りのときなどです。このような場面でのウールのアンサンブルはおすすめです。
年を越し、三ヶ日のお客様がおみえになる頃、お台所の用意などで忙しい時ですので、ウールの羽織は脱いで、ウール着物の上に割烹着を合わせ家事をする・・・なんていうのは昔ながらの情景です。
着物 ウール 見分け方
やわらかも(絹のお着物etc)の中心の昨今、ウール素材がわかりにくい場合があると思いますので、ご説明していきます。
お着物、反物は”繊維(糸)”でできています。この繊維(糸)を織り上げて反物ができますが、この繊維(糸)によって種類が変わります。
この繊維(糸)には3つの種類があります
「たんぱく質」「セルロース」「石油」です。
「たんぱく質」からできたものには、絹糸があります。絹糸は蚕が出した繭を紡いでできたものです。
もう一つ、ウールもそうですね。これもたんぱく質です。羊の毛をカットして練り合わせて糸にしています。羊の毛は短いですよね。このプツプツと千切れた毛を練り上げて糸にするので、それがすこしザラザラとして肌触りになるんです。
「セルロース」とは植物の繊維から成ったものを言います。「麻」「綿」「人絹”じんけん”=レーヨン」などがあります。レーヨンは木材から(パルクから)できています。
「石油」からできているものは、「ポリエステル」「ナイロン」「アクリル」などがあります。
ではお着物の生地の見分け方になりますが、一番わかりやすい方法は”焼いてみる”ことなんです。
もちろん、お着物を燃やすことは現実にはできませんが、
もし仕立て上がってきた時に調べたい時は、切れ端が必ずついてきますので、それをちょっと燃やしてみてみるとわかります。
またお母様などのお着物で素材がわからない時は、たもとの端や糸が少し出ているところを探し、切って試してみてください。
焼く時には燃えるのと燃えない現象にわかれ、まずそこで見分けられます。
動物繊維は燃えません。火をつけてもチュルチュルとこげながら、火が消えてしまうのです。
「セルロース」と「石油」は燃えますが、石油の方は、燃えた後はかたくなって固まります。冷えると固まるんです。ペットボトルなどを燃やした後をイメージしていただければわかるかと思いますが、あのような形で燃えた後固まります。
私が若い頃、張り切って夏物のお着物を買いました。非常に好きな柄だったんです。いざ着ようとしたら、胸のあたりにシワがあり、どうしても取れないのでアイロンをしました。結構なお値段のしたお着物だったので思いもよらなかったのですが、アイロンをしたらピタっと溶けちゃったんです。
すごくショックでした。焼けたところは胸元のどうしても隠せないところでした。どうにか着れないものかと思案しましたが、真正面のところです、もう二度と着れませんでした。非常に残念な出来事でした。
ナイロン素材、石油の糸がこのお着物には入っていたのでしょう。若い頃の失敗ですが、急いでいるときにこのような取り返しのつかない失敗もありますので、事前にお着物の素材をしっかりと把握しておくことが大切です。
また肌触りについてですが、
ウールはザラザラ、チクチクして肌触りはあまりよくありません。絹の滑らかさは素晴らしいものがありますし、麻の爽やかさ、綿にも心地良さがありますが、ウールだけはチクチクし少し残念なところです。もしウールの反物など触る機会がありましたら、肌の柔らかいところに当てて肌触りを確かめてみてください。「ああ、こんな感じなんだ」と実感できると思います。
着物 ウール 良い所 特徴
ウールはとても経済的です。お仕立てが単衣仕立て裏地(八掛)がいらないんです。お洗濯もクリーニングに出さずお家でできます。
クリーニングに出しますと、お洋服以上にお着物の場合は特に絹のお着物はお値段がかかります。大きなシミなどがつきますと、悉皆屋さんにだすと予想以上に金額が高くつきます。
また毛織り物ですし暖かいので、単衣ですが冬も着れるので、3シーズン着れます。
そして雨に強いです。
例えば、絹のちりめんの着物なんかは、雨に濡らさなくともタンスに入れておくだけで縮んできます。何枚かある縮緬のお着物は縮んできます。
またシワになりにくいです。例えば木綿なんかは、とてもシワになりやすいものです。着るたびごとにお手入れしなければなりません。ウールはハンガーにかけておくだけで、シワになりにくくお手入れしやすいのです。
そういった所では、管理のしやすさもあります。普通のお着物はたとうしに包んで、桐のタンスに入れて、という管理が一般的になりますが、お着物が増えていくなかでタンスにお着物が入らなくなってきたら、まずはウールのお着物から出してしまいます。最悪、クローゼットなどでハンガーにかけておくのも大丈夫なのがウールの特徴なのです。
絹など普通のお着物はハンガーにかけっぱなしにしておくと型崩れしてきます。大変なことになりますので、こうゆうことができるのがウールの良いところです。
着物 ウール 悪い所 注意点 虫食い
ウールの着物は虫が食います。
以前、気に入ったお着物がありました。数年、着ることがなくタンスにいれてそのままにしておいたのですが、着てみようと思ったら虫が食っていました。
これは私がきちっと素材を掌握していなかったことが原因です。このお着物は絹とウールの交織だったようです。ウールが混ざっていることがわからなかったのです。
肩の部分にたった2mmですが穴が空いていました。非常に残念ですがもう着れませんでした。
「ウールが入っている場合には必ず防虫剤を入れる・・・」これだけはしっかりと気をつけて抑えていただきたい点です。
もう一点、
短い羊の毛を寄って糸にしていますので、チクチクします。滑らかさがないので、足元の裾さばきが悪いです。
これら2点がウールの残念が所ですので、もし着られる際にはこのような点に注意していただけたらと思います。
着物 ウール 洗濯について
ウールの着物はもちろんクリー二ングでもよいのですが、ご自宅で洗濯することもできます。
自宅で洗濯する際、二つの方法があります。
まずは簡単な方から
洗濯機で洗う時、お着物をきちっと畳んでいただいて、それをネットに入れていただいておしゃれ用洗剤で洗ってください。
その時に洗濯機の設定は「手洗い」「ソフト洗い」にしていただき、
最後の脱水の際「1分足らずの50秒ほど」で終わらす・・・
それで着物ハンガーなどにかけて乾かしていただく。
それが簡単な方法になります。
アイロンもかけられますので、当て布をして仕上げていただければと思います。
注意点は、衿元です。衿元は生地が重なってできているので、形が崩れないように”押さえ縫い”をしておくと安心だと思います。
もう一点は手洗いの方法です。
きれいにしっかり畳んだら手で押しながら洗う方法です。お着物を畳んだ状態で洗いますので、その大きさが入るような大きなシンクなどがない場合は、プラスチックの衣装ケースなどに水を溜めてそこで押し洗いをするのが良いでしょう。
失敗談ですが、長襦袢を洗ったときの話です。「漬け置きをしておけばなお一層きれいになるんじゃないか」と思い、朱色の長襦袢を一晩漬け置きしました。冬でしたので、ちょっと暖かいお湯に漬け置きしていたのです。本当に無知でした。次の日、真っ赤に水が染まっていました。
そのような失敗をする方はなかなかいないとは思いますけれども、若いころの無知さからそういう体験がありましたので、このようなお話をさせていただきました。
着物 ウール 柄 帯結び
私自身、昔はウールのお着物に馴染み難く感じていました。ウール着物は、”紺地に絣模様・・・”など定番のイメージが強烈でそれ以上の発展したイメージがつきませんでした。しかし普段着物を着始めた際、ウールの着物の方がきやすいんじゃないかと思い調べ始めましたら、なかなかいいものがたくさん出てきていましてウール着物に対する苦手意識も薄れました。ウールでは定番の格子柄でも様々な配色を使ったものや、モダンなもの、小紋文様、茶屋辻文様、亀甲文様、幾何学的な模様・・・など一般的なお着物に見劣りしないようなお柄がたくさんあります。
素材の方も、肌触りがチクチクとしたものから改良されて、軽くて柔らかい着心地の良いものも出てきています。
またシルク50%ウール50%のシルクウールなどがあり、艶やかなものもあります。
今は帯次第で楽しめるのがウールの着物なんじゃないかと思います。
特に帯に関していえば、”半幅帯が使える”のが非常に楽ですね。帯締めも帯揚げもいらない半幅帯の使い方がありますし、本当に幅広く好きな結び方ができます。
例えば角出し風というのがよくありますし、貝の口、ちょっと変わったところでは侍結びなんかも良いですし、定番の文庫も良いでしょう。半幅帯になりますと無限に結びがありますので、年代によって結びわけるとよいと思います。
その他で、私はウール着物に兵児帯もよく使います。素材さえあえば兵児帯も非常に楽です。今はウール地の兵児帯なんかもありますよ。
あと、やっぱりお太鼓にしたという場合は、帯の素材を紬を選んでお太鼓結びにするとよいでしょう。
ウールのお着物は、様々な変化系の着方ができるのでそういった部分を楽しめるのが一番だと思います。