宝尽しのお着物のお話

宝尽しの柄の意味

宝尽しとは、”宝物を全部出し尽くして”描く文様のことをいいます。
これは中国の吉祥思想の一つから由来し、日本では室町時代に和風化されて登場しました。

縁起の良い、福徳を招く文様と言われていて、お祝いの着物や帯などに用いられてきました。時代と地方によって、文様の内容に若干違いがありますが、現在でも一般的に描かれている宝尽し文様についていくつかお話していきたいと思います。

「宝珠紋(ほうじゅもん)」・・・
これは如意宝珠の玉といわれていて、望むものを思いのままに出してくれる玉なんです。ドラえもんのポケットみたいなものですね。夢を叶えてくれるものと言われています。これは、袱紗などに使われることがある文様になります。

「打出の小槌」・・・
これも、小槌を振れば欲しいものが思いのままにでてくる、という非常にありがたい文様です。また打つ小物ということから、”敵を討つ”という意味も含まれています。

「宝巻(ほうかん)」「巻軸」・・・
というのは、ありがたいお経が書かれた巻物なんです。経典には教養などの知識が書かれていいることから”知恵を授かる”といわれています。

「宝鑰(ほうやく)」・・・
とは、宝巻など大切なものをしまっている”蔵の鍵(蔵の錠)”のこと

「金納」・・・
宝を入れる袋のことを表します。

「筒守り(つつまもり)」・・・宝巻を入れておくものです。

「隠れ蓑(かくれみの)」「隠れ笠かくれがさ)」・・・今はあまり描かれてはないのですが、”危ないものから身を守る”という意味があります。

「丁子(ちょうじ)」・・・
亜熱帯地域原産のクローブですが、昔は薬や香料や染料というのは非常に貴重な宝物だったことから描かれています。

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「分銅(ふんどう)」・・・
これは金銀などをはかる秤のことです。

「七宝(しっぽう)」「花輪違(はなわちがい)・・・
お茶などしていらっしゃる方には見かける文様かと思います。また、七宝の模様だけで帯や着物を作られています。
七宝模様といったら現在も小物類、茶碗など様々な物に描かれているのを見かけますが、特に茶道の道具などで重宝されている文様かと思います。

宝尽しのお着物はどんな場面に着る?

では宝尽し文様のお着物はどんなシーンに合わせるかというお話をさせていただきます。

宝尽しはおめでたい柄ですので、おめでたい席ではどういう場面でも使っていただいて良いのではないかと思います。

結婚式

特に結婚式などですね。結婚式の黒留袖のお柄や花嫁さんのお色直しの振袖にも宝尽しがいいんではないでしょうか。親族として結婚式に出席する際には、宝尽しの色留袖が良いでしょう。

訪問着の絵羽模様に宝尽しが描かれているもの、宝尽しの付け下げなどもよいですね。

お正月

お正月のお参りや新年のお祝いに訪問する際のお着物、訪問着や色留袖に宝尽しが描かれているのもよいですね。

お正月にお家にお客様を招いたり、お台所用事をする際には宝尽しの小紋がよいですね。こうゆう時の小紋などは、宝尽しの中の何点かの文様が飛び柄であしらわれたものがよいですよ。

成人式

二十歳のお嬢様の晴れ姿ですので、黒地に宝尽しの絵羽模様が入りますと非常に格調高いお振袖姿になると思います。

祝賀パーティー

このようなパーティーに招かれる方も招く方もどちらも、宝尽し文様を使われてもよいと思います。訪問着、付け下げ、留袖などの格のお着物を選びましょう。

その他、お祝いの行事

宝尽しの訪問着や付け下げは、その他に「入学式や卒業式の母親の装い」「お宮参りや七五三の母親の装い」などにも最適です。

宝尽しの小物類

七宝柄、宝尽しのお着物や帯を持っていないけれども、”お祝いの気持ちを表したい”という時は
「白の半衿」に宝尽しの中のどれかを模様を刺繍してみたり、
宝尽し文様の和装バッグを使ってみたりと、小物周りで用いてみるとよいと思います。

余談になりますが、
私の知人で日舞の先生をしている方がいるのですが、非常に慎ましい方でして、3人いるお嬢様のお祝いにそれぞれ違う宝文様を使って長襦袢を作って送られていらっしゃいました。
長襦袢ですから表には見えないのですが、お嬢様への幸せを祈る思いが込められた素敵な贈り物だなと感じたことがありました。

宝尽しの小紋でお出かけ

お着物の柄には季節を選ぶものが多々ありますが、
宝尽し柄というのは、季節を選ばずオールシーズン着れる柄ですので非常に重宝なものだと言えます。

注意する点は、おめでたい柄ですのでお悔み関連のおめでたくない席では絶対に着ないということです。

宝尽しの小紋でお出かけする際は、おめでたい席でしか着てはダメということではありません。普通のお出かけ着として気軽に着ていくことができます。

宝尽しの小紋の種類には、
総柄の小紋、飛び柄で点々と入っている小紋、小さく宝尽し文様が入っている江戸小紋、など様々あります。お茶のお稽古の時に江戸小紋の宝尽しの柄なんていうのは楽しいんではないかと思います。

このように、季節を選ばすほとんどの場面で着られる宝尽し小紋ですので気軽にお着物を楽しむにはとてもおすすめですよ。

宝尽しのお着物に合わせる帯

フォーマル(礼装)のお着物に合わせる帯は、金糸銀糸の入った黒地の帯でよろしいかと思います。

宝尽し文様が着物の全体にあしらわれた小紋ですと帯の選び方に工夫が必要です。総柄の宝尽し文様のお着物は可愛らしいのですが、ガチャガチャして見えるので、合わせる帯に大きい柄の描かれたものなんかは合わせづらいと思います。シンプルな柄の帯があわせやすいでしょう。

また名古屋帯で、前とお太鼓の部分だけに宝尽しの中のどれか一点が使われている帯を合わせるのも良いですよ。

また良くも悪くも季節感のないのが宝尽しの特徴ですので、このようなお着物には”帯で季節感を出す”のもよいと思います。

宝尽しの帯に合う着物

お祝いの場に行くのにそれにふさわしいお着物が無い時、
または紋付の色無地だけで少し寂しい印象の時、
宝尽し文様の西陣織の袋帯などあると非常に便利だと思います。

帯でお祝いの気持ちを表していますし、お着物の柄それほど華やかなものでなくっても伝わります。

ですが「宝尽し名古屋帯」の場合は遊び感覚、普段感覚で締めていただいて大丈夫です。おめでたい帯だからという意味にとらわれず、楽しい気持ちで気軽に締めていただければと思います。

このようにフォーマルの時と、普段の時で宝尽し文様の使い方、気持ちの込め方が少し違ってきますので覚えておくとよいでしょう。






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