美意識と感性は年とともに高まる 〜着物の心4〜

若い頃に少しかかわった事が今年で40年。
先日、ふとした事から引き続き其の行事が行われている事を知りました。
あー有り難い、続いてるんだ、
今まで続けて下さった方々の心労を思うと感謝の思いで言葉がありません。
どうか今後とも無事に継承されますようにと心から願うばかりです。

人の誠・信頼は時空を超えて繋がっているんだと感動致しました。
と共に、自分の知らない所でご迷惑を掛けている事が沢山ある事を知りました。

人間生きていればいろんな事があります。
何でも2番が好きな怠け者で、のんびりやの私ですがもう68歳。

考えもしていなかった高齢になり生きておりますが、
自分の年齢を実感出来ず、ピント来ないのが偽らぬ気持ちです。
しかし、体力的には、想定していた以上の衰えは日々痛感しています。

ある時から、これからはスローライフにしようと決めました。
歩く速度も半分、行動も半分とそう決めるとなんだか穏やかな日を過ごせるようになりました。

知人が聞けば、もともとマイペースで人の言う事は聞かない癖にと笑うかも知れませんが・・・。

そんな私ですが、此の年なって、今までにやり残している事
中途半端に成っている事を完成させなければいけない時がきたのではないかと反省し
一つ一つ解決していこうと思いたった矢先の出来事が、初めにお話した事でした。

今までお世話になった人たちにお詫びをしなければ、
若い頃に手がけて途中で終えている事、考えれば数限りなくあります。
ある意味では生きて来た足跡が全て未解決のままと言っても過言ではありません。
なんとか決着を付けたい・・・そんな思いにかられる毎日です。

そう考えると後、何年生きるかは解りませんが余りにもテーマが多すぎて、
今まで生きた時間と同じくらいの時間があっても間に合いません。

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どうしよう。スローライフなんてとんでもないと落込みそうですが、
悩んでもいても解決出来る事ではありません。
まず、出来る事から・目前のテーマからと思っています。

ワインではありませんが人生も年月を掛けて熟成していく物だ実感しています。
形式のみを追うことで精一杯でだったお茶のお稽古も50年の時を経て、
再び学ぶ時間を持て「そういう事だったのか」と身にしみ込んでいくのが解ります。
これから、また一歩から学んでいこうと思っております。

若い頃はなにをしていたのだろうかと自分の愚かさを恥じる事ばかりですが、
其の若い頃の経験がかすかでもあったからこそとも思います。

今と成れば経験した事・見てきた事・聞いた事全てが納得出来
無駄ではなかったと思うようになれました。

日常生活から・自分の意識から消えていた物事が、
縁に触れ、昔以上に鮮やかに蘇ってきます。

植えられた小さな種が、長い間私の体内で枯れずに
熟成されていたのではと思うようになりました。

どうか若い皆さんは多くの種をその身に植えておいて下さい。
本人が忘れてしまった様な事も、時が思い出させてくれ
貴方の中で静かに熟成されていた事を知ります。
そして、人生に何一つ無駄な経験は無かった事を実感するでしょう。

知識として知っていた事が、人生経験・文化・教養という樽の中で熟成され、
いい味を出す美意識・感性として育っていくのです。
其れは長い年月を積み重ねる程に美味しいワインに成るように。

でも、感性・美意識の種をまいておかないと何時迄経っても芽は出てきません。

感性を磨くには、「本物に触れる事」「いい物を見る事」と若い頃に良く聞きました。

思い巡らし・心躍るそんな本物の音楽との出会い、
本物の文学との出会に目覚め、
時を忘れさせる本物の絵画。

本物の伝統工芸の技に、本物の着物の染織の美しさに出合う。
そして本物の人との出会いが貴方の生きる姿勢を変えます。

其の様な本物と出会い
「きれい!素敵!!」という気持ちの高まり・感受性が貴方の感性を高めていきます。

身近な例で、歌舞伎を見に行ったとしましょう。
貴方はきっと、余程の先入観が無い限り、
初めての歌舞伎見学で内容は解らなくても、
噂だけの役者と、本物の役者の絶対的な存在感の違いを感じ
貴方の脳裏に「素晴らしかった!」との印象は刻まれていくと思います。

これこそがごまかす事の出来ない「本物」との出会いだと思います。

初めはただ見て感じるそれだけでいいと思います。
そして知識を深めまた本物に触れる、
大切なのは、生命が揺さぶられ・感じられる清らかな生命の持続。

その蓄積が「本物」と「そうでないもの」との判断基準を教えてくれます。
其の事を感性・美意識と言うのではないでしょうか。

身に付いた美意識・感性は静かに貴方に寄り添い、
あらゆる場面で「本物を見る目」として貴方を護り支えてくれます。

こんなお話があります。
弟子に「茶の湯の神髄とは」と聞かれた利休は
「茶は服の良きように点て(たて)、炭は湯の湧くように置き、
冬は暖かに夏は涼しく、花は野の花の様に生け、
刻限は早めに、降らずとも雨の用意、相客に心せよ」と答えると
「師匠様、其れくらいは存じています」と答える弟子に
「もし其れが十分にできたら、私は貴方の弟子になりましょう」
と答えたそうです。

今日より若い日はなく、若さも美貌も確実に失われていきます。
しかし美意識・感性は年とともに高まる
そんな生き方が出来たら良いですね。

学ぶものの心構えを「利休道家」の初めに此の様に詠まれています。

其の道に入らんと思ふ心こそ
我身(わがみ)ながらの師匠なりけれ

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投稿者: mika

『かしこく、たのしく、うつくしく』をめざして生活のなかに自然と着物と「和」の心をとりいれ、着物生活を楽しみたい方を応援する着物教室です。

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